いらっしゃいませ。
「名作BAR」のMasterYです。
本日の名作は『復活の日』となっております。
私が映画製作するならば、ハリウッドの大作に拮抗し得るスケールとテーマをもった作品。できれば、「日本沈没」の大ヒットに続いて小松左京氏の原作から選ぶことを考えた。こうして、「神と人類の復活」という、人間その存在そのものが問われる「復活の日」が決定した。
『復活の日』パンフレットより引用
本編には、この熱量たっぷりの製作者(=角川春樹)の思いがこれでもかというぐらい込められていました。
ハリウッドの大作に肩を並べる稀有な邦画となっているのです。
それでは、本日の「名作BAR」開店です。
物語の概要
米軍で極秘に開発されていた生物兵器「MM-88」が、何者かによって盗まれた。
しかし、「MM-88」を母国に運ぶ途中でその泥棒たちは事故に遭ってしまい、「MM-88」が世界に拡散されてしまう。
しかも、このウイルスのワクチンはまだ開発されていないのだ。
「MM-88」は瞬く間に世界中で蔓延してしまい、「イタリアかぜ」と名付けられた。
こうして、「MM-88」は全人類の生命を脅かす存在となってしまったのである。
致死率45%を超えるMM-88。このウイルスの毒性は、極寒の地ではなくなるという特徴があった。
南極観測隊では、「イタリアかぜ」の症状をもつ人がいない。
そこで、アメリカ大統領は、南極観測隊に人類の未来を託す。
果たして、生き残った者たちは、世界を「復活」させることができるのか。
「日本での映画化は絶対できない」と原作者でさえ思っていた『復活の日』を見事に実写化した日本映画界屈指の名作である。
ハリウッドの大作に迫る 日本映画の底力!
日本映画であるけれども、洋画にしか観れないほどのクオリティで非常に驚いた。
本作はとんでもないお金をかけているんだろうなということが随所随所で伝わってきたほどである。
一体どれぐらいの製作費がかかっているのだろう。
そう思いパンフレットを読んでみると、そこには驚愕の数字が並んでいた。
「復活の日」の製作費は当初16億円で組まれた。ところが、撮影が具体化するにつれて予算は雪ダルマ式にふくれ上がっていった。
『復活の日』パンフレット「プロダクションノート」より引用
例えば、南極ロケで劇中に使用する潜水艦と駆逐艦、それに出演者・スタッフの宿泊用に豪華客船リンド・ブラッド号をチャーター。それだけで3億円がふっとんだ。こうして、最終的には、予算の5割増し、24億5千万円の製作費がかけられた。もちろん、これは日本映画史上、最高の額である。
な、なんと・・・製作費24億5千万であったとは・・・。
日本映画史上最高額であることはもちろん、ハリウッド大作の中でも上位にランキングするのではないか。
本作の凄まじい底力を見せつけられてしまった。
「私は、この映画を創るために映画界に入ったのである」と語る角川春樹氏の情熱がたっぷりと伝わってくる。
世界で初めて潜水艦で南極航海を成し遂げたのが『復活の日』ということも、本作を伝説化させるエピソードの1つと言えよう。
こんなにもスケールが大きい邦画作品に出逢ったのは後にも先にも初めてのことであった。
私の1番好きな場面
「世界を舞台にした映画を邦画でも製作することができる」。
そのことを魅せつけてくれただけでも、かなりの貢献であるはずだ。
そもそも草刈正雄さんが、日本人に見えない。日本人離れした顔立ちで、英語での演技もめちゃくちゃ上手い。
これには本当にびっくりした。彼はこんなにも多才な俳優であったのか。
また、邦画であるにもかかわらず、キャストの大部分が外国人ということも異例である。
実は本作の前にも、出演者のほとんどが外国人俳優であった邦画があった。
それが高倉健さん主演の『ゴルゴ13』(1973年)である。
高倉健さん以外は外国人俳優が演じる話題作であった。
しかし、外国人俳優の声はすべて日本人声優によるオール吹き替えというなかなかに斬新な演出となっていた。
もちろん、ゴルゴ13役の高倉健さんも日本語しか喋らない。ロケ地は全編イランであるのに・・・である。
外国人俳優が英語を全く喋らないというのもリアリティが損なわなている気がして、個人的にはそこをもう少しどうにかしてほしいと思っていた。
そのモヤモヤを解決してくれたのが、『復活の日』であった。
全編の大部分が本人による英語のセリフとなっており、日本語字幕での上映というこれまた新鮮な邦画として出来上がっていたのである。
ただ1点だけ気になったところがあった。
それは全ての登場人物が国籍に関わらず「英語」を喋っていたことである。
日本人は日本語、ドイツ人はドイツ語、ロシア人はロシア語、イタリア人はイタリア語、アメリカ人とイギリス人は英語を喋る。
そこまでしてもよかったのではないかと。観客はいつでもわがままなのだ!(笑)
今回は緊急事態のため、世界共通言語として「英語」を用いていたという設定であればすんなりと納得できたのかもしれない。
おわりに
「イタリアかぜ」の症状が、2020年現在世界中で蔓延している「新型コロナウイルス」に似ているということが、なによりも驚いた。
公開当時に本作を観ていたならば、こんなのあり得ないと思い純粋なSF作品だと思っていただろう。
しかし、2020年に世界で新型コロナウイルスが蔓延したことで、このSFがより現実味をもって私たちに襲いかかっている。
今見ても、全く古さを感じさせない。冷戦期という時代背景を除けば、現代の世界に当てはまる作品なのではないだろうか。
世界では、ロックダウン状態になり、日本も緊急事態宣言を発令するまでに至っている。
本作の状況が2020年の状況と限りなく近かったということが恐ろしい。
小松左京的「第三次世界大戦」は人類が争うことなく起こり、そのまま終結を迎えた。
「MM-88=新型コロナウイルス」のような状況にならないように、いま自分たちに出来ることは何なのか。
そのことを真剣に考え行動することの大切さを改めて戒められた。
「Life is Wonderful」と心の底から思えるような日常に戻るために、私たちは努力する必要がある。
新型コロナウイルスが収束したときには、「人生っていいものだ」と心の中で呟こう。
私は本作を観て、そう決めたものだ。
本日の名作『復活の日』
【スタッフ】
製作:角川春樹
原作:小松左京
脚本:高田宏治、グレゴリー・ナップ、深作欣二
監督:深作欣二
プロデューサー:岡田裕、大橋隆
撮影:木村大作
編集:鈴木晄
音楽:羽田健太郎
音楽監督:鈴木清司
参考文献
『復活の日』パンフレット
関連作品①:『犬神家の一族』
横溝正史の原作を映画化した本作は、「角川映画といえばこれ!」というほど超有名な作品。
日本映画史に残る「角川映画」の伝説はここから始まったのである。
今でも一族絡みのミステリー作品が作られているが、毎回『犬神家の一族』のことを思い出せずにはいられない。
中でも、「逆さま足」のオマージュは本当に様々な作品で捧げられている。
本作を観たことがない人であっても、このシーンだけは知っている。そんな人は非常に多いはずである。
本作を観ずして、ミステリー好きという勿れ。ミステリー好き必見の名作である。
関連作品②:『ワールド・ウォーZ』
次々と感染していく作品といえば、「ゾンビ映画」を真っ先に思い浮かべる人も多いのでは。
私がゾンビ映画で1本選ぶとすれば、ブラピ主演の本作である。
謎のウイルスに感染しゾンビ化する人々が爆発的に増加。
人類滅亡の危機にさらされるなか、発生源を突き止める任務を命じられた元国連調査員(ブラット・ピッド)は、危険を承知で世界各地を飛び回る。そんな物語だ。
そういえば、『相席食堂』の「スギちゃん」初登場回(2019年5月7日放送)を観ているときに私は無性に本作を観たくなった。
オープニングでスギちゃんは持ちギャグの「ワイルドだろぉ~」を披露するのだが、何回もネタをやりすぎているのかいつものセリフが全く聞こえない。
さすがの千鳥の2人もこれにはすぐさま「ちょっとまてぇい」ボタンを押す。
そして耳を澄ましてもう一度見てみると、完全に「ワールドウォー」と叫んでいるようにしか聞こえないのだ。
これには、私も千鳥と一緒に腹を抱えて大笑いした。
そしてひとしきり大笑いした後に、
ふと「ワールドウォーってどこかで聞いた名前だな。何だっけ」
となってたどり着いたのが『ワールドウォーZ』というわけだ。
まさかすぎる出会いである。
このようにいついかなる時であっても、アンテナさえ張り巡らせておけば、名作に出逢うチャンスは無数に転がっている。
そのことをとてつもなく実感したものだ。
それでは、次の名作でお待ちしております。
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