いらっしゃいませ。
「名作BAR」のMasterYです。
本日の名作は『ジョーズ / JAWS』となっております。
水中カメラが映し出す無邪気に海を泳いでいる人たちの足。この足を見るだけで心臓が高鳴る。
そう、あのお馴染みの音楽が水中から迫りくる「奴」の恐怖に拍車をかけるのです。臨場感あふれるサメの襲撃が観客たちを釘付けにします。
本作を観てしまったら、しばらく海水浴に行けなくなってしまう。それほどまでにインパクトある作品となっています。
動物パニック映画の金字塔と言われているのも納得の1本ですね。
それでは、本日の「名作BAR」開店です。
物語の概要
ロングアイランドにあるアミティは、アメリカの有名なリゾート観光都市。
夏はこの都市にとって1番の稼ぎ時であり、海水浴に訪れる多くの観光客たちがこの都市の大きな収入源となっていた。
市長のボーンは、今年もビーチに多くの観光客を呼び込むための宣伝に力を入れていたが、予期せぬ事態が発生する。
アミティのビーチに「人喰いザメ」が現れたのだ…。
主人公は、ニューヨークからアミティに出向してきたブロディ署長。
彼はアミティの市民の安全を守るため、人喰いザメがビーチに出たことを隠蔽しようとするボーン市長に対して必死に抵抗する。この2人の戦いが前半の物語を作り上げる。
そして物語の後半では、ブロディ署長、海洋学者のフーパ― 、サメ殺しのプロであるクイントの3人と「人喰いザメ」との激闘が描かれていく‥。
本作の魅力 ①ジョーズといえば・・・
映画『JAWS』の代名詞ともいえるジョン・ウィリアムズによる音楽から本作はスタートする。
冒頭から「待ってました!」とつい言ってしまいたくなるほど、劇場の雰囲気を盛り上げてくれる作品だ。
何よりも海にサメが現れたときのビーチでのパニックの様子は、この素晴らしい音楽も相まって臨場感たっぷりである。
めちゃくちゃ恐ろしい。
サメに襲われて足から喰われてしまう。まさかこんなにも恐ろしい追体験をすることになるなんて公開当時に鑑賞した多くの者は思いもしなかったであろう。
本作を観終わった人たちは、海でサメに遭遇するかもしれないという恐怖を嫌でも植え付けられることになる。
本作の魅力 ②スピルバーグの偉業
原作には市長やお偉方の政治腐敗、フーパーとブロディ夫人の不倫など、人間ドラマがもっと描き込まれている。
キネマ旬報社編 (2019)『午前十時の映画祭10-FINAL プログラム』キネマ旬報社
ところが、スピルバーグはこれを映画化する際、これでもかと言わんばかりに原作の内容を削ぎ落としていく。
面白い要素だけを集めてきて、それらを映画的手法を凝らしてピックアップしていったのだ。
こうして、スピルバーグ作品の中でもトップクラスのアトラクションが完成した。
そう、本作はただのパニック映画ではないのだ。
まず事件が起きて、その事件を主人公たちが実際に目の当たりにする。ここまでは確かにパニック映画の典型例だ。
しかし、本作の面白要素はまだまだ終わらない。ここからは、主人公たちがその事件に立ち向かう解決編が始まるのだ。
この解決編が「サメ退治」という雰囲気ではなく、完全に主人公たちによるハラハラドキドキの「冒険活劇」の雰囲気を纏っていて楽しい。
スピルバーグ監督作品らしさがこの後半戦にギュギュっと凝縮されていることがよくわかる。
主人公のブロディ署長以外にクイント、フーパーという魅力的なキャラクターを冒険活劇のメンバーとして配置しているのも上手い。
この3人の船での会話だけを切り取っても十分面白いのだ。
物語の後半には、主人公のブロディよりもクイントのことを好きになる人も多いのではないか。
『JAWS』放映以降、サメを題材とした映画で本作の影響を受けていない作品は恐らくないと言ってもいいだろう。
それだけでなく、本作を上回るサメ映画もきっと存在しないはずだ。
つまり、本作はサメ映画界の元祖チャンピオンとしていまだに防衛をし続けている無敵の名作なのである。
驚きなのは、スピルバーグ監督にとって本作は2作目の劇場映画作品だということだ。
若いときから既に恐ろしいほどの才能を持ち合わせていたとは。スピルバーグ監督、恐るべし!
1番印象に残った場面
フーパーが、檻に入って先端に毒を塗った槍をサメの口の中へ入れる作戦を決行した場面が1番印象に残っている。
このシーンは、本作の中でも1番恐ろしい場面ではないかと思う。背後からサメに襲撃され、肝心の槍を呆気なく海の底へと落としてしまう。
ここから、フーパーにとって恐怖の時間が訪れるのだ。
何度も何度も檻を攻撃してくるサメ。その攻撃によって檻の形がどんどん歪んでくる。そしてついに檻が壊されてしまい、サメが大きな口を開けてフーパー目掛けて突っ込んでくる。
絶体絶命のピンチとは、まさにこのときのフーパーのことを指した言葉に違いない。私だったら、腰がすっかりと抜けてしまい、気を失ってしまうことであろう。
それぐらい恐ろしすぎるサメの襲撃の場面であり、手に汗握るかなり見応えのあるシーンであった。
この檻のシーンは、後のスピルバーグ監督作品『ジュラシックパーク』内で、カプセルのような乗り物に入ったまま恐竜に襲われるシーンを彷彿とさせるような演出であったなあ。
おわりに
ジョン・ウィリアムズの音楽が頭から離れない。これは、本作を観終わった後にカフェで過ごしていたときの話だ。
アイスコーヒーを飲みながら本作の感想を書いていると、突然「例の音」が鳴り響いた。その瞬間背筋が凍り、心臓の鼓動がどんどん早くなっていく。
かなりびっくりした。
「なぜ店内でジョーズのBGMが鳴り響いているのか」と周りを見渡してみる。すると、店員さんがテーブルの片づけをするために椅子を引いていたことがわかった。
なんと、これが「ジョーズのBGM」の正体だったのである。誰かが椅子を引く音ですら、あのジョン・ウィリアムズの音楽に聞こえてしまうなんて。
本作が、観客に与えたインパクトは何も海水浴だけではない。日常生活での何気ない音ですら恐怖の旋律へと変えてしまうインパクトがあったのだ。
『JAWS』の音楽は、かなり心臓に悪い。
本日の名作『ジョーズ / JAWS』
【キャスト】
マーティン・ブロディ署長:ロイ・シャイダー
クイント:ロバート・ショウ
マット・フーパー:リチャード・ドレイファス
ブロディ夫人:ロレイン・ゲイリー
メドウズ (カール・ゴットリーブ)
ボーン市長:マーレイ・ハミルトン
【スタッフ】
原作:ピーター・ベンチリー
脚本:ピーター・ベンチリー、カール・ゴットリーブ
撮影:ビル・バトラー
音楽:ジョン・ウィリアムズ
監督:スティーブン・スピルバーグ
【作品情報】
製作年:1975年
製作国:アメリカ
上映時間:124分
【アカデミー賞】
作曲賞、音響賞、編集賞をそれぞれ受賞
参考文献
キネマ旬報社編 (2019)『午前十時の映画祭10-FINAL プログラム』キネマ旬報社
関連作品①:『ジョーズ 2 / JAWS 2 』
『ジョーズ 2 / JAWS 2 』(1978)
脚本:カール・ゴットリーブ、ハワード・サックラー
監督:ジュノー・シュウォーク
関西のUSJ (ユニバーサルスタジオジャパン)にあるアトラクションのモデルが、『ジョーズ 2』だ。こちらの倒し方のほうが親しみやすい方も多いのでは。
私もUSJのアトラクションは、『ジョーズ』を基に作られていたものとすっかり思い込んでいた。
USJへ行く機会のある方へ、一度『ジョーズ 2』を観てから行くのはいかがでしょう。
関連作品②:知的風ハット (2021)『サメ映画大全』左右社
こちらの本は、サメ映画だけを取り扱う一風変わった映画評となっている。
さすが「サメ映画大全」ということだけあって、この本を読めばサメ映画に関する知識は全て身につくのではと思えてくる。
それぐらい満足度の高い映画評として仕上っているのが面白い。
サメ映画界のチャンピオンである『ジョーズ』を味わった後、「サメ映画」に興味を持った方にとっては、もってこいのガイド本になること間違いなしだ。
この本を読めば、必ず次に観たいサメ映画が見つかるはず!
それでは、次の名作でお待ちしております。
コメント
サメ映画界の常識を覗けました笑
サメ映画大全だと…
心臓がいくつあっても足りなそうだなぁ…(・_・)
まおさん、いつもコメントありがとうございます!
意外と原点の本作を観ていない方って多いですよね。
観たことがない方でも、
「ジョーズ」=「サメ」のイメージが浸透していることに凄みを感じます!
勇気を出して、お気に入りのサメ映画を探す旅に出かけましょう!笑