電車は今日も乗客たちの人生を運ぶ 『阪急電車-片道15分の奇跡-』

Movie

いらっしゃいませ。

「名作BAR」のMasterYです。

本日の名作は、
『阪急電車-片道15分の奇跡-』
となっております。

阪急電車は「あずき色の車体」となかなかに
「レトロな内装」が特徴的な
関西名物の私鉄電車のことなんです。

それでは、本日の「名作BAR」開店です。

目次
物語の概要
本作の魅力
私の1番好きな場面
おわりに
本日の名作『阪急電車-片道15分の奇跡-』
関連作品①:『メタモルフォーゼの縁側』
関連作品②:有川浩 (2010) 『阪急電車』幻冬舎文庫
関連作品③:児玉清 (2017)『ひたすら面白い小説が読みたくて』中公文庫

物語の概要

宝塚駅から西宮北口駅までの
たった8つの区間である
阪急今津線。

「宝塚駅」を出発した阪急電車は、
「宝塚南口駅」「逆瀬川駅」「小林駅」
「仁川駅」「甲東園駅」「門戸厄神駅」
の各駅に停車し、終点の
「西宮北口駅」まで走り切る。

そして折り返し。

阪急電車は、
再び「宝塚駅」まで戻っていく。

この片道わずか15分そこそこの旅は、
今日も乗客たちの小さな物語を
乗せて走っている。

このように本作は、
阪急今津線に偶然乗り合わせた
人々が紡ぎ出す物語である。

本作の魅力

原作と多少の違いはあるが、
本作は原作の良さを失わずに
映画ならではの描写を巧みに用いながら、
心温まる素敵なお話を
観客たちに運んでくれた。

2時間ぐらいの尺に
あの素晴らしい小説の内容を
よくぞあれだけギュッと
凝縮出来たものだ。

本作の脚本を務めた岡田惠和は、
インタビューで今回の仕事を
次のように振り返っている。

今回の僕の仕事は
意外と2時間の枠に
収まりそうで収まりにくい小説を
脚本に置き換え、映画として
素敵なものにしていくことでした。

映画『阪急電車』パンフレットより

岡田さんの凄腕により、
原作ファンも納得できる
素敵な映画として仕上がったのである。

物語の冒頭で
登場人物の紹介をしていく
アレンジは本当に
素晴らしいものであった。

このおかげで、観客たちは
登場人物の多さに
混乱することなく
物語に集中できるのである。

出演している俳優陣たちも、
今から思えばかなり豪華である。

1人1人が原作の登場人物のイメージと
ほぼぴったりと重なり、
違和感を覚えた役者さんは
いなかったと言い切れる。
そんな最高のキャスティングであった。

特に私が原作のイメージとぴったりだと
思った人物は、翔子役を演じた中谷美紀と
時江役を演じた宮本信子の2人であった。

あの難しい役をここまで堂々と
演じきることができるのは、
おそらくこの2人しかいないであろう。
納得の演技力であった。

まだ本作を観たことがない人には、
この2人のシーンを
たっぷりと堪能してほしい。

戸田恵梨香や有村架純の関西弁が
心地良かったのもいいところだ。
さすが2人とも兵庫県出身だけある。

やっぱり関西弁は
関西の人が喋らないと
少し違和感があるよね。

2人とも可愛いし、
ずっと観ていられるぐらい
素晴らしかった。

それにしても
この頃の戸田恵梨香は
本当にびっくりするぐらい
可愛いよね。

今回改めてキャストの出身地を
調べてみて、主要キャストに
関西出身者の割合が
多いことに気がついた。

ネイティブ関西人が演じる関西弁は、
観ていてとっても耳が安心する。
この辺りのキャスティングの采配も
抜かりない本作には恐れ入ったものだ。

また宝塚ホテルの従業員役として
大杉漣さんが特別出演していたことに驚いた。
この場面には、思わずテンションが上がった。

本当にわずかな時間の出演ではあったが、
相変わらずいい味を出していた。
さすがバイプレイヤーズのリーダーである。

新しい作品で
もう彼と出会うことができない
と思うと悲しい。

だけど、過去の作品で
いつでも元気な蓮さんを
観ることができると思うと、
悲しんでばかりもいられない。

まだまだ観ていない作品が
山のようにあるのだから。

これからも映画の中で
たくさんお会いしましょうね、
蓮さん。

私の1番好きな場面

私の1番好きな場面は、
とあるカフェでの出来事。

ミサの親友マユミが、
ミサの彼氏であるカツヤの携帯電話を
真っ二つにへし折り、
お冷の中へと放り込む場面である。

この場面は原作にはなく
映画オリジナルの場面だ。

原作を読んでいた私は、
マユミは淡々とカツヤの携帯から
ミサのメールアドレスと
携帯番号を消去するんだろうなあ
と思っていた。

しかし、まさかすぎるマユミの行動に
思いっ切り吹き出してしまった。
このアレンジはさすがに面白すぎる。

マユミ役が相武紗季だったからこその
アレンジだと思うのは私だけか。
相武紗季はこういう役が
本当によく似合う。

山P主演の月9ドラマ
『ブザービート〜崖っぷちのヒーロー〜』で
相武紗季の華麗なる「舌打ち」を
見てからというもの、
その思いは募るばかりである。

いやあ、相武紗季は
やっぱりこうじゃなくっちゃ。

彼女は友情出演にも関わらず、
私にとって1番印象に残る
演技をしてくれた
素晴らしい女優さんである。

おわりに

本作は実際の阪急電車や
駅で撮影を行っているので、
小説とはまた少し違った
楽しみ方ができるのが非常に良かった。

映画の撮影をするために、
臨時列車を走らせてもらったという。
何本走行したかというと‥‥

本数はクランクイン前に走らせた
ロケハン用も含めて、なんと59本!

映画『阪急電車』パンフレットより

通常列車が10分おきに運行する中で、
これだけの数の列車を走らせてくれた
阪急電車関係者の方々、
本当にありがとうございました。

おかげさまで、
阪急電車はびっくりするぐらい
「画」になるなあと
改めて思ったものだ。

あずき色の車体は
何度観ても美しい。
本作を観てすっかり私は
阪急電車のファンになった。

小説を読んでも映画を観ても
阪急電車に乗りたくなるのは
もちろんのこと、
中でも「阪急今津線」に
乗りたくなるはずだ。

また、「宝塚駅」〜「西宮北口駅」間の
どの駅に降りてみようかな?
という楽しみ方もできる。

私は「小林」で一度降りて
散歩してみたい。
そして本作の翔子のように
「豚まん」を食べてみたいな。

この映画は定期的に
見返してもいい。
純粋にそう思える
素敵な作品であった。

本日の名作『阪急電車-片道15分の奇跡-』

(出典:【YouTube】ponycanyon「阪急電車 片道15分の奇跡」)

【キャスト】
高瀬翔子:中谷美紀 (東京都出身)
森岡ミサ:戸田恵梨香 (兵庫県出身)
伊藤康江:南果歩 (兵庫県出身)
権田原美帆:谷村美月 (大阪府出身)
門田悦子:有村架純 (兵庫県出身) *映画初出演
萩原亜美:芦田愛菜 (兵庫県出身)
カツヤ:小柳友 (東京都出身)
小坂圭一郎:勝地涼 (東京都出身)
遠山竜太:玉山鉄二 (京都府出身)
マユミ:相武紗季 (兵庫県出身) *友情出演
宝塚ホテル従業員:大杉漣 (徳島県出身) *特別出演
萩原時江:宮本信子 (北海道出身)

【スタッフ】
原作:有川浩「阪急電車」幻冬舎
音楽:吉俣良 / 主題歌:aiko「ホーム」(ポニーキャニオン)
脚本:岡田惠和/ 監督:三宅喜重

【作品情報】
製作年:2011年
上映時間:119分

関連作品①:『メタモルフォーゼの縁側』

『メタモルフォーゼの縁側』(2022)
原作:鶴谷香央理 / 脚本:岡田惠和 / 監督:狩山俊輔

なんとなんと本作品!

『阪急電車』で孫とおばあちゃん役で
出演していたあのお2人が、
時と端役を超えて
「嬉しすぎる再共演」を果たす。

そう!芦田愛菜と宮本信子が
17歳の女子高生と75歳の老婦人の役でW主演。

ただし今回は随分と歳の離れた
「ベストフレンド」として
共演するのである。

この作品の超素敵ポイントは、
2人を繋げるモノが「血縁」ではなく、
「BL (ボーイズ・ラブ)漫画」な
ところに尽きる。

2人が幸せそうに好きな
「BL漫画」について語り合う姿は
とっても眩しく見えた。

この光景を見るために
私は『阪急電車』でこの2人に
出会ったのではないかと
思ったぐらい感動したのだ。

好きなものを
堂々と好きだと公言する。
そんな勇気を後ろから
優しく押してもらえる。

関連作品②:有川浩 (2010) 『阪急電車』幻冬舎文庫

鑑賞後、有川浩さんの原作
『阪急電車』に
乗車してみるのも楽しい。

私のおすすめは、
児玉清さんの素敵な解説が
収録されている文庫本版だ。

有川浩さんの作品が
大好きでたまらない
彼の気持ちがギュギュっと
詰まった文章は、読後の余韻を
何十倍も膨らませてくれる。

映画と原作との違いを
味わうこともできるので、
まだ読んだことないよ
という方は、ぜひこの機会に
乗車してみてはいかが。

この小説を片手に
阪急今津線へ
乗車しに行くって
遊び方もアリだ。

関連作品③:児玉清 (2017)『ひたすら面白い小説が読みたくて』中公文庫

まだまだ児玉清さんの解説が
読みたくてたまらない。

阪急電車の解説を読んで、
そんな方々が
続々と出てくるに違いない。

ご安心を!

芸能界イチの読書家である
児玉清さんの「作品解説」だけを
集めてきて1冊にまとめた
贅沢すぎる1冊が存在する。

『ひたすら面白い小説が読みたくて』だ。

彼の知的でユーモア溢れる解説の数々に
「ひたすら読みたくてしょうがない小説」が
どんどん膨れ上がっていくはず。

私は児玉清さんの
素晴らしいエッセイや
作品解説の文章を読んで、
非常に感銘を受けた。

彼は作品に対してレビューをする際に、
作り手へのリスペクトの気持ちを
決して忘れない。
そんな作品に対して
真摯に向き合う彼の姿勢に
私は心底惚れてしまったのだ。

このような背景もあり、
私の尊敬する児玉清さんの作品
『ひたすら面白い小説が読みたくて』に
リスペクトの想いを込めさせてもらったのが、
本ブログのサブタイトル

「ひたすら面白い作品に逢いたくて」だ。

児玉清さんのように
「ひたすら面白い作品に出会いたい」。

そんな思いを抱いた私が、
今まで出会ってきた
「作品たち」を紹介していく。

それがこの「名作BAR」のテーマである。

私が紹介する素敵な作品たちに
「今すぐにでも逢いたい」。

少しでも多くの皆さんに、
そう思ってもらえるような記事を
お届けしたいものである。

それでは、次の名作で
お待ちしております。

コメント

  1. まお より:

    相武紗季さん声めっちゃ可愛いのに性悪女の役が1番似合いますよね。

    • MasterY より:

      まおさん、コメントありがとうございます。
      そのギャップがたまらなく素敵ですよね!
      イジワルなママ友を言い負かす役とかも見てみたいものです。